【読書メモ】細田由利 第9章教室内相互行為ー制度的場面の分析『会話分析の基礎』

313 そのような制度的場面においても、言葉のやりとりはその制度的場面における相互行為の目的(例えば法廷において証言をする、診療を受ける、著名人にインタビューするなど)を果たすために非常に重要な役割を持つ。よって、その制度的場面において参加者がいかにして様々な目的を達成するのかを検証するのには会話分析の手法を用いた分析が実に有益である。この章ではまず、制度的場面は会話分析研究においていかにして分析されるのか、その留意点を述べる。その後、制度的場面の一例である教室における相互行為を採り上げ、教室内相互行為の会話分析的研究の展開について解説していく。
 
1.制度的場面の相互行為
314 会話参加者がある特定の社会的コンテクストが相互行為に関連性があるものとしてふるまう時に、はじめてそのコンテクストがその相互行為に大きな影響を与えると捉えられるのである(Schegloff, 1991)。
 
314 相互行為参加者のアイデンティティや属性(医者、患者、先生、生徒等)を考察する際には、分析者はそのアイデンティティや属性をもともと存在するものとして様々な行為の説明に利用するのでなく、参加者自身が会話の中のその瞬時に自分、会話相手、または話の中で言及している人のアイデンティティや属性にどのように志向しているのか(またはいないのか)を詳細な観察を通して検証するのだ。
 
316 これらの制度的場面の特徴を相互行為内で実現することにより、参加者は、(1)その相互行為の目的とその目的に結びついたアイデンティティ、(2)その制度的場面で会話参加者が「できること」「していいこと」の制約、および(3)その会話が行われている制度的場面特有の手続きや解釈の枠組みに対する志向を公にするのである(Drew and Heritage, 1992; Heritage and Clayman, 2010)。こういった参加者の志向を精査することによりそれぞれの制度的場面の特徴がみえてくるのである。
 
316 以下では制度的場面の1つである教室場面を取り上げる会話分析研究の教室における相互行為分析への応用の可能性について検討していく。そのために教室というコンテクストをどのように捉えるべきか、教室における相互行為に特有のプラクティスはいかなるところで観察可能なのか、会話分析は教室における学習を記述することに適しているのか、などを考察する。
 
2.教室における相互行為
2.1 教室における相互行為の会話分析
317 よって会話分析を教育相互行為の分析に用いる最も重要な利点の1つは、会話分析の手法を用いることによって私たち観察者は2人以上の参加者の間で起こる学習の過程を観察することができることである(Markee and Kasper,2004)。例えば、教室での質問と応答の連鎖において学習者の応答はその学習者のその質問に対する理解を公に示しているし、教師の第3順番の発話はその教師がその学習者の応答をどのように理解・解釈したかを示していると考えられる。
 
330 現在までの研究で学習者の第2順番(応答)のあとに起こる教師による第3順番は単なるフィードバックや評価を与える以上の役目をしていることがわかった。Lee(2007)は教師の第3順番がどのような行為をするかは学習者が第2順番でどのような発話をするかによるもので、第3順番はその直前のやりとに再度働きかけて方向付けするものであると論じている。そしてLeeは第3順番が成し遂げる様々な教授的行為(学習者が返答するのに苦労している質問を噛み砕くこと、教育目標に向けての方向付け、学習者が望ましい返答をできるようにするためのヒントの提供、教室マネージメント等)を挙げている。

 

会話分析の基礎

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【読書メモ】細田由利 第5章 修復の組織 『会話分析の基礎』

183 これまでみてきた連鎖の組織が機能するには参加者同士がお互いの行為を理解することが前提となっている。従って参加者間の間主観性を維持しながら相互行為を先に進めるためには、聞き取りや理解の上で問題が生じた場合、それに対処する必要がある。その方法が「修復(repair)の組織」である。これからみていく修復のいくつものパターンは、参加者たちが実際にどのようにそれを達成するのか、そして、修復というプロセスもまた順番交替のメカニズムの中で行われており、誰がどのように修復するかということについて優先性があることも私たちに示してくれるだろう。
 
1.会話分析における修復連鎖
185−6  修復の連鎖は会話参加者たちが発話上、聞き取り上、または理解上の問題に志向を示した際に生じる。このように会話参加者が振り返って指し示す、前の発話の中の問題の部分を会話分析では問題源(trouble source)と呼ぶ。会話においていかなる発話も問題源になりえる。上記のように間違いがあっても修復の連鎖が生じないことはあるし、また間違いがなくても修復の連鎖が生じることがある。よって、修復の連鎖が生じるかどうかは会話参加者がその連鎖を「開始」するかどうかにかかっている。さらに修復の連鎖が開始されれば会話参加者は修復を試みるわけだが、それで必ずしもその試みが成功するとは限らない。
 
186 このように、「修復」とは問題解決が無事に成功に終わった際の結果を指す。したがって、修復連鎖を理解する上で「修復」そのものと修復の「開始」は切り離して捉える必要がある。
 
2.修復のタイプ
186-7 修復連鎖において、問題源を含む発話をした人が修復連鎖を開始するとは限らない。問題源を含む発話をした者自身によって修復が開始される場合自己開始修復(self-initiated repair)と、問題源を含む発話をした者以外の人によって開始される場合他者開始修復(other-iniated repair)がある。また、前述のように、修復連鎖において「開始」と「修復」は別々に捉える必要がある。よって、修復連鎖において連鎖を開始したが必ずしも修復を行うとは限らない。修復も、問題源を含む発話をした人自身によってされる自己修復(self-repair)と、問題源を含む発話をした人以外によってされる他者修復(other-repair )があいる。
 
3.修復開始の位置
190  SSJ1977によれば修復開始は次の4箇所に起こる。
a.問題源を含む発言と同じ順番内
b.順番移行に適切な場:TRP
c.次の順番
d.問題源を含む発言が起こった順番から数えて3番目の位置
 
192 事例12は問題となる発言の次の順番に修復開始が起こっている事例だ。大抵の場合他者による修復開始はこの位置に起こるものである。
192 他者が修復の開始をする際には、他者は修復すべき点があることだけを指し示して修復行為そのものは問題の発言をした人自身ができるようにすることが多い。
 
194 第3順番修復の組織
1.A:発話(後に問題とされる発話)
2.B:1行目のAの発話をとくに問題視しない短い発話(「ふ:ん」「うん」など)
3.1行目の自らの発話の修復開始
 
194 上の組織をみてわかるように、第3順番修復の連鎖においては話し手と受け手の間に聞き取りや理解の問題が特に生じていないのにもかかわらず、話し手自身の一種のこだわりにより、1行目の発話を自ら問題化し、第3順番で修復を開始する。第3順番修復はTRPで起こる修復開始と修復開始と非常に似たものであり、この両者の違いは、問題源を含む順番と修復開始の間に他者による(短い)発話があるかどうかである。第3順番修復の場合に含まれる他者によるこの発話は、この発話はその前の順番での発話を特に問題化するものではない。
 
194 一見よく似ているが、一般に第3の位置での修復(third position repair)と呼ばれる修復連鎖がある。これは参加者同士の間主観性(inter subjectivity)の問題、つまりある発話とそれによって成された行為を互いにどのように理解したかが関わってくる。
 
194−6 会話分析において「順番」と「位置」は異なった意味合いを持つ。「順番(turn)」は次の話者が順番を取ればそれで変わり、そこで順番は数えられる。一方「位置」は「順番」とは異なり発話者が何回交替したかでは数えられない。次の「位置」がどこであるのかはある発話に対して理解を示し、それに応じている、あるいは、それを踏まえている発話がどこでされたかを観察することによって判断することができる。よってある発話が問題源を含んだ発話から数えて2番目の順番にあったとしてもそこが第2位置であるとは限らないし、問題源を含んだ発話から数えて順番が2番目より先にある発話であっても第2位置であることがある。
 
196 第3位置修復の組織
第1位置 A:発話(後に問題とされる発話)
第2位置 B:第1位置のAの発話をどう理解したか示す発話
第3位置 A:第2位置のBの発話を聞いて第1位置の自分の発話が誤解されていたことを知り修復を開始して修復自体を行う
 
4.修復開始の技法
4.1 自己開始修復
200 自己開始の代表的な技法は単語や音の途中停止、音の伸び、「えーと」「あー」、間隙など様々な言い淀みである。これらの言い淀みが発されると発話の進行性が一時停滞し、その直後に修復が起こる可能性がある。
 
206 以上のように、自己修復開始では単語の発話を途中で停止したり、音を伸ばしたり、「えーと」「あー」など様々な言い淀みや「ていうか」、「あれ」で開始したり、間隙を置いたりする。またそれに加えて第3順番や第3位置修復の開始には気付きを示す「あっ」や否定を示す「ちがう」や「いや」およびそのバリエーションがよく観察される。
 
⒋2 他者開始修復
206 他者による修復開始は大抵の場合、問題源のすぐ次の順番で行われる。次の順番で行われる他者開始修復に使用される技法は何が問題であるのかによって違ってくる。ここでは問題源を特定する力の弱い技法から強い技法の順に紹介する。
206 問題源を特定する力が一番弱いものには「え?」、「は?」「なに?」など「無限定の質問」(open-class repair initiator)(Drew, 1977) と呼ばれるものが挙げられる。これらの修復開始技法が修復開始に用いられた場合には、問題源を含む順番の発話をした話者は自分の発話が全く聞き取れなかったと判断することが多く、よってこの技法によって開始された修復は、問題源を含む順番の発話をそのまま繰り返すことによって完了することが多い。
 
211このように、繰り返しによって開始された修復は、問題源の発話を繰り返すことによって完了する場合と、問題源の発話を説明することによって完了する場合があることがわかる。どちらによって修復を完了させるかは、その時の文脈や状況によって、問題源を含む発話をした話者自身が選択することになる。
 
213 以上のように、他者による修復開始が複数回起こる際に使われる修復開始の技法は無秩序に並べられるのではなく問題源の特定能力が弱いものから強いものへという順で起こる、という秩序があることを観察することができる。
 
5 自己修復の優先性
216 このことからも自己による問題源の修復の方が他者による修復よりもより速い問題解決法であるのがわかる。言い換えれば自己による修復開始および修復完了の機会は、常に他者による修復開始および修復完了に先立ってあるということで、ここから自己開始、自己修復の優先性ということが観察される。
 
6 日本語特有の修復
6.1「ていうか」の使用
6.2 指示代名詞の使用
6.3 格助詞を含んだ修復
 
 
平本さんと細田さんの修復の章を読んでみて、下記の点が違うと感じた。
①それぞれにユニークな節があった。平本さんの修復では、第5節で「修復と行為」という節を設けられていた。細田さんのほうでは、「日本語特有の修復」という節があった。このため、平本さんの修復の章は社会学よりで、細田さんの修復の章は言語学よりに感じた。
②章末が違っていた。『会話分析入門』では、読書案内があり、他の関連する文献が載っていた。『会話分析の基礎』では、課題があり、基本問題や応用問題があった。 
 

 

会話分析の基礎

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会話分析入門

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【読書メモ】第8章「修復」平本毅(2017)『会話分析入門』

第1節 はじめに
191 相互行為を成り立たせるための前提となる発話の産出、発話の聞き取り、発話の理解にかかわるトラブルに対処する方法を「修復(repair)」と呼ぶ(Schegloff, Jefferson & Sacks 1977)。 この章では、修復が相互行為においてどのように組織だって行われているかについて学ぼう。
 
第2節 修復の対象
193 これらの例が示すように、修復はそれまでの発話や連鎖の進行をいったん中断し、トラブルの解決に向けて対処する手続きである。
 
193 修復における「トラブル」という概念にかんして2点ほど注意すべきこと
 
⑴修復が対処するトラブルは、上で述べたように、相互行為を成り立たせるための前提となる発話の産出、聞き取り、理解にかかわるトラブルであり、広義の「トラブル」、たとえば意見の相違による言い争いや人間関係のこじれ、苦情、非難などといった問題は含まない。もちろん、往々にして人々は相互行為の中でそうした広義のトラブルに対処するが、それらへの対処の方法はこの章で述べる修復とは区別される。重要な点は、修復は、ある発話を通じて遂行されるはずの行為がそもそも発行しないこと、あるいはその可能性に対処するものだということである。これに対し、言い争いや苦情や非難はそれ自体が発話を用いて遂行される行為の1種であって、そこでは行為は発行しているということである。
 
⑵修復が対処するトラブルは、必ずしも何らかの客観的な間違いや失敗とは限らない。このことは、次の両面から明らかである。一方で、話し手が発音、文法、言葉の意味などの点で明らかな間違いを含んだ発話をした場合でも、必ずしも修復が行われるわけではない。他方では、一見何の問題もないように思われる発話に対して修復が行われることもある。つまり、修復は「間違い」の「訂正」という行為に限定されない、より広範囲の現象を指す概念であるということを押さえておきたい。
 
194-5 つまり、修復の対象となるのは、何らかの客観的な基準(正誤、適切・不適切等)に照らして研究者が場面の外からそれを判定するものではなく、修復の手続きそのものによって参与者同士が互いに相手に示すものである。その意味では、発話のなかのありとあらゆるものが、客観的な正誤いかんにかかわらず、修復の手続きによって遡及的に修復の対象と位置づけられる可能性があると言えよう。
 
195 修復の手続きにおいて修復の対象と位置づけられる発話部分を「トラブル原」と呼ぶ
 
トラブル:参与者が直面している問題(たとえば、聞き取りの問題)
トラブル源:その問題に対処するさいに、修復手続きの作業対象となる特定の発話や発話部分のこと(聞き取りの問題の特定の聞き取れなかった発話など)
 
第3節 修復の過程
195 修復の過程は、「修復の開始」の段階、すなわちトラブルの存在をマークする段階と、「修復の実行」の段階、すなわちトラブルを解決する段階に区別できる。
 
196 修復開始と修復実行は、それを行う人がトラブル源に対してどんな関係を持つかに注目すると、それぞれ2つに区別できる。トラブル源の話し手自身が修復を開始した場合、それを修復の「自己開始」と呼ぶ。トラブル源の話し手以外の参与者が修復を開始した場合、それは修復の「他者開始」と呼ばれる。同様に、トラブル源の話し手自身が修復を実行した場合、それを修復の「自己実行」と呼び、トラブル源の話し手以外の参与者修復を実行した場合は「他者実行」となる。
 
197 修復の自己開始・他者自己実行の事例は話し手が「言葉探し(word search)」を始めたときに、探している言葉を他者が提示することで問題を解決するケースが多い。
 
198 修復の他者開始・他者実行は、他者による訂正の形を取ることが多い。ここでは、修復開始の段階と修復実行の段階が分離しておらず、03行目のミチエの発話が修復開始と修復実行を同時に行っている。
 
3.2 修復開始の位置
198 ここで記述する修復開始の位置とは、参与者が修復を開始するために利用できる機会(repair-initiation opportunity space)のことであり、そうした機会は以下で見るように連続して立ち現れる。重要なのは、ある機会で修復が開始された場合、それはすなわち、それ以前にあった修復の機会が利用されなかったためにその機会が利用可能となったということを含意する、ということである。
 
3.2.1 同じ順番内での修復開始
198 修復開始のための最初の機会は、トラブル源と同じ発話順番内において、すなわち、トラブル源を含む発話順番がTRF(移行適切場所)に至る以前に訪れる。同じ順番内は、修復の自己開始が行われるもっとも典型的な位置である。つまり、修復開始機会として利用できる最初の位置は、おもに自己開始のための位置なのである。
 
199 同じ順番内で修復が開始された場合、(1)(4)(7)に見られたように、その同じ順番内で、トラブル源の話し手自身によって修復が実行されることが多い。つまり、修復の過程が開始されてから修復の実行によって問題が解決されるまでが、1つの発話順番内で1人の話し手によって行われる場合が多い。これは、3.2.3で述べる他者開始修復の過程との大きな違いである。
 
3.2.2 移行空間での修復開始
3.2.3 次の順番での修復開始
200 修復がトラブル源と同じ順番内やそのあとの順番移行空間で開始されなかった場合、次に修復が開始されうる位置は、トラブル源を含む順番の次の順番である。同じ順番内や順番移行空間は修復の自己開始が行われる位置であったが、次の順番は修復の他者開始がもっとも典型的に行われる位置である。
 
3.2.4 第3の位置での修復開始
202 トラブル源を含む順番の次の順番で受け手が修復を開始しなかった場合、その次に訪れる修復開始は2種類ある。
①第3の位置での修復開始
②第3の順番での修復開始
→註:第3の「順番」とは、ある順番から数えて物理的に隣接した3つめの順番を指す。第3の「位置」とは、ある順番への反応が産出され(第2の位置)、それに対する反応が産出される場所を指す。第3の「位置」とは、ある順番から数えて物理的に隣接した3つ目の順番に現れることもあれば、そうでないこともある。
 
202 この2つに共通するのは、トラブル源を含む発話順番に対し、その受け手がそこに何もトラブルがなかったものとして反応を返したあとに、トラブル源の話し手が修復を自己開始して、自身の先行順番内にトラブル源があったことを遡及的に明らかにする、ということである。
 
202 第3の位置での修復開始では、トラブル源となる発話に対する受け手の反応が修復開始(および実行)に直接かかわる。具体的には、トラブル源となる発話(T1)に対する受け手の反応(T2)によって、受け手がT1について何らかの誤った理解をしていることが明らかとなり、それに対してT1の話し手が自身の先行発話内のある要素をトラブル源として修復を自己開始・自己実行する(T3)というものである。
 
204 注意したいのは、T2で明らかとなる受け手の誤解はT3での修復開始のきっかけとなるものではあるものの、トラブル源そのものではないということである。トラブル源はあくまでその誤解の源であるT1内の要素((11)では04行目の「あいつ」)であり、T3における修復の実行もその要素を対象に行われる。
 
3.2.5 第3の順番での修復
204 第3の順番での修復開始でも、トラブル源を含む発話順番(T1)に対し、その受け手がそこに何もトラブルがなかったものとして反応を返したあとに(T2)、T1の話し手がT1内のある要素をトラブル源として修復を自己開始する(T3)。両者の違いは、第3の順番での修復開始の場合、T3での修復開始にT2での受け手の反応が無関係だという点である。
 
204-5 前節の第3の位置での修復開始では、T2での相手の反応に表れた誤解がT3での修復開始の引き金となったが、ここではT2のマサキの反応はT3のユズルの修復開始に関与していない。
 
第4節 他者修復開始の発話形式
206 他者開始修復においては、他者は修復開始のみを行い、修復の実行はその次の順番でトラブル源の話し手によってなされる場合が圧倒的に多い。言い換えれば、他者は修復開始によってトラブルに直面したことを伝え、修復の実行をトラブル源の話し手に委ねる。多くの場合、他者修復開始に用いられる発話はトラブル源がどこにあるかを示す形でデザインされる。SSJ 1977 377
 
206 以下にトラブル源の所在やトラブルのタイプを特定する度合いが弱いものから強いものの順に、他者修復開始の形式を記述する。
 
4.1 無限定の質問
206 トラブル源の所在やトラブルの特定する度合いがもっとも弱い他者修復開始の形式は、「ん?」、「え?」、「なに?」などの「無限定の質問(open class repair initiator )」と呼ばれる。drew 1997
無限定の質問は、先行発話に何らかの問題があったことは表示するものの、先行発話のどの部分にかんして問題があったのか、そしてそれはどのようなタイプの問題なのかは明示しない。ゆえに、どのような修復を実行するのが適切なのかは、かなりの程度まで修復の実行者に委ねられることになる。
 
4.2 トラブル源のカテゴリーを特定する疑問詞を用いた質問
207 次のタイプは、「だれ?」、「どこ?」、「いつ?」などの疑問詞が単独で他者修復開始に用いられる発話である。無限定の質問が先行発話のどの部分に問題があったのかを特定しないのに対し、これらの質問は、先行発話内のどのカテゴリーの語(「だれ?」→人の指示、「どこ?」→場所指示、「いつ?」→時間指示)に問題があったのかを特定する。
何は?無限定の質問になる
 
4.3 先行発話の部分的繰り返しと疑問詞を用いた質問
208 4.2で見た方法は、先行発話内の特定のカテゴリーの語がトラブル源であることを示すが、もしもそのカテゴリーの後が先行発話内に複数あるならばそのうちのどれがトラブル源なのかまでは特定されない。これに対して、次の記述する他者修復開始の方法は、先行発話内におけるトラブル源の位置を浮き彫りにすることによって、何がトラブル源であるかをより明確に特定する。それは、トラブル源を含む発話の一部を修復開始の発話で繰り返し、トラブル源にあたる部分に疑問詞を用いることによってである。
「何の意味では?」、「誰から?」
 
⒋4  トラブル源の繰り返し
209 先行発話内のトラブル源となる部分を繰り返す発話も、他者修復開始の方法として用いられる。⒋3で述べたトラブル源の位置を特定する質問同様、繰り返しもトラブル源をピンポイントで特定する。そして、繰り返しができる程度にはトラブル源が聞き取れたことを表示する点で、疑問詞を用いてトラブル源の要素を相手に提示することを求める質問より、トラブル源にかんする把握の度合いは強い。
 
⒋5 トラブル源を標的に定めた内容質問
210 繰り返し同様、トラブル源を標的に定めた内容質問も、トラブル源をピンポイントで特定する。加えて、そのトラブル源にかんして、修復の開始者が理解の問題に直面していることも明確に示す。
「xってなに?」とい発話形式を用いて修復を開始する。
→「ガングリという語は聞き取れたのだが、それが何を指すのかの理解の問題に直面している」を示す
211 疑問詞を用いず、トラブル源の発話部分の引用のみで組み立てられた発話も同様の働きをする
 
213 トラブル源を標的に定めた内容質問は、トラブルのタイプが理解の問題であることを明示し、理解の障害となっている先行発話内の要素(あるいはその不在)も特定される。その一方で、疑問詞の使用からわかるように、トラブル源の要素にかんして修復開始者が何らかの理解を提示するのではなく、理解の障害を取り除く作業は修復実行者に委ねられる。
 
4.6 理解候補の提示
213 理解候補の提示によって他者修復開始が行われるとき、修復開始者はトラブル源の要素にかんして一定の理解を提示し、トラブル源の話し手にその理解が正しいかどうか確認を求める。理解候補の提示は、トラブル源の所在およびトラブルのタイプを明確に特定し、トラブル源の要素にかんする一定の理解を提示する点において、他者修復開始の方法の中でもっとも強い方法であるといえる。
 
214 理解候補の提示は、先行発話で明示的に言及されなかった要素を対象にして行われることもある。そのさいによく見られるのは、先行発話の統語構造に挿入して意味が成り立つような[名詞+助詞]の形式の発話を用いそれを上昇調で産出して修復開始を行うというものである(hayashi & hayano 2013)
 
第5節 修復と行為
215 上で述べたように、修復は相互行為を成り立たせるための前提となる発話産出、聞き取り、および理解にかんする問題、すなわち、コミュニケーションのチャンネルに生じた障害を解決するために用いられる方策である。しかしながら、特定の文脈において、修復のプラクティスが発話の産出・聞き取り・理解のトラブルに対処する以外の行為を行うための媒体として用いられることもある。たとえば、他者修復開始はしばしば不同意やその他の相手に歩調を合わせない行為(nonalignment)の前触れとして使われ、また受け手にそう聞かれる。
 

 

会話分析入門

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【読書メモ】山崎敬一・西阪仰編『語る身体・見る身体』

 第一章 語る身体・見る身体 西阪仰 PP.3−29

1 順番どりシステム
サックスの一つの驚き

「一時に一人が、そして一人だけが」しゃべっている

会話における発言順番の交替が一定のしかたでなされているから

ルールのセットがある
(1)会話の順番交替のルール

ルール群だけでは会話におけるいかなる事態も「決定」されない

重要なのは、そのつど発話がどうデザインされているかである

会話における発話のデザインは、(a)そのつど局所的に、(b)会話への参与者自身によって、(c)相互行為的に成し遂げられていく

順番どりシステムがのべているのはこのことである

 

2 相互行為のなかの行為
順番どりシステムが「モデル」と呼ばれることの意味?

(1)の「モデル」は、わたしたちが会話においてさまざまなかたちで使用することのできる資源を記述したものなのである

「モデル」が定式化されるならば、それは、実際の会話の具体的展開を記述するための道具として利用できる

(1)の定式は順番交替のメカニズムにかんする一般的な仮説ではない

したがって、その定式と「矛盾」するような事柄があったとしても、それはけっして、その「反証」にはならない

 

3 参与することとしての語ること
わたしたちが、順番どりシステムを通し見るのは、「談話の文法」ではない。相互行為(のなかの行為)がいかに組織されるか、である

語ることは、文法的に適格な文を発することではなく、社会的な活動に、すなわち相互行為に参与(participate)することである

話し手は、みずからの語りを、
(a)現在の発話が相互行為の展開上のどの位置にあるのか、
(b)受け手と語り手自身が何者としてそこで出会われているのか(インビュアー/ゲスト、他人/他人)、
に合わせてデザインされなければならない

発話をそのつどデザインしなければならないならば、相手の発言を注意深く聞くことが、決定的に必要となる。と同時に、そのつどの発話は、相手に注意深く聞かれるようデザインされなければならない

話すことと聞くことは、一体となって相互行為(における活動・行為)を達成する

 

4 「参与の枠組み」
「参与(participate)」という概念を、相互行為の分析の中心に据えたのはゴフマンが最初である

ゴフマンは受け手と一口にいってもいろいろな受け手がいることに注意を促している

直接語りかけれている者、他の受け手、盗み聞きなど

他方、ゴフマンによれば、発話者にもさまざま水準の参与のあり方がある

こうした話し手や受け手の布置をゴフマンは「参与の枠組(participation framework)」と読んだ

C.グッドウィンは、物語を語ること(特定の出来事について時間順に語っていくこと)が、一定の「参与の枠組」のなかで、語り手および受け手たちにより協同で達成されるものであることを、示している

サックスによれば、物語が語られるとき、それはその時の状況のなかにかんらかのきっかけをもっているはずだ。つまり、あることがその時その場で語られたのは、それがたんに真実であるから(だけ)ではあるまい(真実であることは、無限にある。なぜその特定のことがその時に語られなければならなかったかが、問題であるはずだ)

一般に、物語を語ることは、そこでなされている活動に埋め込まれ、その活動のなかで、なにごとかを成し遂げているためにもちいられる。そして、そのさい「参与の枠組」が重要な役割をはたしうる

グッドウィンの議論は、前節の会話分析の視点に連なっている。参与は一定の活動へのかかわり方であり、その活動をおこなうなかで、そのつどの発話がだれに合わせてどうデザインされているか、が論じられている

 

5 参与の社会組織
人びとがそのつどいかにして有意味なしかたで特定の参与者であるのかということ、そのこと自体を一つの社会現象としてみる見方があってもいい

当人たちは、自分たちの発話ならびに非言語的振る舞いをその場に合わせてデザインしながら、相互行為を成し遂げていく

 

6 結語
参与は会話分析の基本的なテーマである

会話分析は言語そのものに関心を持っているわけではない

むしろ相互行為の組織が重要なのである(相互行為にそのつど参与者たちがどのように参与していくか)

 

 

語る身体・見る身体

語る身体・見る身体

 

 

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #13

Sacks argues that members can identify "possible descriptions" solely on the basis of formal features such as those he describes.

 訳:サックスは、次のように主張している。成員は、彼(サックス)が説明したような秩序だった特性から成る基盤に支えられて、「可能性がある記述」をひとつだけに同定することができると。

 

メモ:formal featuresのformalを秩序だったとした。formal ってちょっとなんて訳したらいいのかわからないな。規則に従ったのほうがよかったかな。"possible descriptions"もたくさんある記述の候補というニュアンスなんだろうな。

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #12

Notice two points of perspective shared with linguistics and ethnoscience. There is, first, the view that analysis of human sciences need not wait for results from other sciences and that communicative sequences can be analyzed as entities in themselves without reference to actual events depicted therein.

 

 訳:言語学と民族科学を共有した2つの観点があることに注意しよう。ひとつは、人間諸科学の分析が他の諸科学の成果を待たなくてよいことと、(2つめは) コミュニケーションの連鎖は、そのときに表現された実際の出来事について言及せずに、それ自体を実体として分析可能であるという観点である。

 

メモ:first があるが、secondがない。これからでてくるのかな、でもandがあったし、これからsecond viewがでてきたら、括弧の2つめは消そう。

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #11

 Members are seen as using social knowledge in three ways: (a) to recognize particular strings of sentences as possible or potentially valid instances of descriptions, stories, conversations, etc.; (b) to achieve certain social effects: to elicit a response, to get the floor, to induce somebody to grant a favor, etc.; (c) to communicate affect such as praise, criticism, humor, etc.

 

訳:メンバーたちは、次の3つの方法において、社会的知識を使っているようにみえる。(a)固有の一連の文脈を、記述や物語、会話などのあり得る、潜在的に妥当な事実としてみなすために;(b)誰かに親切をするように仕向けたり、発言権を得たり、応答を引きだしたりするなど、期待できる社会的効果を達成するために;(c)称賛や非難、面白さなどの感情(affect)を伝えるために。

 

メモ: to induce somebody to grant a favor 、親切をするように仕向けるでいいのだろうか。ここで、somebodyがでてくるのがよくわからない。おそらく、大意として誰かの親切や好意を引き出すようにするということでいいのだろう。

affectも感情でいいだろう。