【読書メモ】細田由利 第5章 修復の組織 『会話分析の基礎』

183 これまでみてきた連鎖の組織が機能するには参加者同士がお互いの行為を理解することが前提となっている。従って参加者間の間主観性を維持しながら相互行為を先に進めるためには、聞き取りや理解の上で問題が生じた場合、それに対処する必要がある。その方法が「修復(repair)の組織」である。これからみていく修復のいくつものパターンは、参加者たちが実際にどのようにそれを達成するのか、そして、修復というプロセスもまた順番交替のメカニズムの中で行われており、誰がどのように修復するかということについて優先性があることも私たちに示してくれるだろう。
 
1.会話分析における修復連鎖
185−6  修復の連鎖は会話参加者たちが発話上、聞き取り上、または理解上の問題に志向を示した際に生じる。このように会話参加者が振り返って指し示す、前の発話の中の問題の部分を会話分析では問題源(trouble source)と呼ぶ。会話においていかなる発話も問題源になりえる。上記のように間違いがあっても修復の連鎖が生じないことはあるし、また間違いがなくても修復の連鎖が生じることがある。よって、修復の連鎖が生じるかどうかは会話参加者がその連鎖を「開始」するかどうかにかかっている。さらに修復の連鎖が開始されれば会話参加者は修復を試みるわけだが、それで必ずしもその試みが成功するとは限らない。
 
186 このように、「修復」とは問題解決が無事に成功に終わった際の結果を指す。したがって、修復連鎖を理解する上で「修復」そのものと修復の「開始」は切り離して捉える必要がある。
 
2.修復のタイプ
186-7 修復連鎖において、問題源を含む発話をした人が修復連鎖を開始するとは限らない。問題源を含む発話をした者自身によって修復が開始される場合自己開始修復(self-initiated repair)と、問題源を含む発話をした者以外の人によって開始される場合他者開始修復(other-iniated repair)がある。また、前述のように、修復連鎖において「開始」と「修復」は別々に捉える必要がある。よって、修復連鎖において連鎖を開始したが必ずしも修復を行うとは限らない。修復も、問題源を含む発話をした人自身によってされる自己修復(self-repair)と、問題源を含む発話をした人以外によってされる他者修復(other-repair )があいる。
 
3.修復開始の位置
190  SSJ1977によれば修復開始は次の4箇所に起こる。
a.問題源を含む発言と同じ順番内
b.順番移行に適切な場:TRP
c.次の順番
d.問題源を含む発言が起こった順番から数えて3番目の位置
 
192 事例12は問題となる発言の次の順番に修復開始が起こっている事例だ。大抵の場合他者による修復開始はこの位置に起こるものである。
192 他者が修復の開始をする際には、他者は修復すべき点があることだけを指し示して修復行為そのものは問題の発言をした人自身ができるようにすることが多い。
 
194 第3順番修復の組織
1.A:発話(後に問題とされる発話)
2.B:1行目のAの発話をとくに問題視しない短い発話(「ふ:ん」「うん」など)
3.1行目の自らの発話の修復開始
 
194 上の組織をみてわかるように、第3順番修復の連鎖においては話し手と受け手の間に聞き取りや理解の問題が特に生じていないのにもかかわらず、話し手自身の一種のこだわりにより、1行目の発話を自ら問題化し、第3順番で修復を開始する。第3順番修復はTRPで起こる修復開始と修復開始と非常に似たものであり、この両者の違いは、問題源を含む順番と修復開始の間に他者による(短い)発話があるかどうかである。第3順番修復の場合に含まれる他者によるこの発話は、この発話はその前の順番での発話を特に問題化するものではない。
 
194 一見よく似ているが、一般に第3の位置での修復(third position repair)と呼ばれる修復連鎖がある。これは参加者同士の間主観性(inter subjectivity)の問題、つまりある発話とそれによって成された行為を互いにどのように理解したかが関わってくる。
 
194−6 会話分析において「順番」と「位置」は異なった意味合いを持つ。「順番(turn)」は次の話者が順番を取ればそれで変わり、そこで順番は数えられる。一方「位置」は「順番」とは異なり発話者が何回交替したかでは数えられない。次の「位置」がどこであるのかはある発話に対して理解を示し、それに応じている、あるいは、それを踏まえている発話がどこでされたかを観察することによって判断することができる。よってある発話が問題源を含んだ発話から数えて2番目の順番にあったとしてもそこが第2位置であるとは限らないし、問題源を含んだ発話から数えて順番が2番目より先にある発話であっても第2位置であることがある。
 
196 第3位置修復の組織
第1位置 A:発話(後に問題とされる発話)
第2位置 B:第1位置のAの発話をどう理解したか示す発話
第3位置 A:第2位置のBの発話を聞いて第1位置の自分の発話が誤解されていたことを知り修復を開始して修復自体を行う
 
4.修復開始の技法
4.1 自己開始修復
200 自己開始の代表的な技法は単語や音の途中停止、音の伸び、「えーと」「あー」、間隙など様々な言い淀みである。これらの言い淀みが発されると発話の進行性が一時停滞し、その直後に修復が起こる可能性がある。
 
206 以上のように、自己修復開始では単語の発話を途中で停止したり、音を伸ばしたり、「えーと」「あー」など様々な言い淀みや「ていうか」、「あれ」で開始したり、間隙を置いたりする。またそれに加えて第3順番や第3位置修復の開始には気付きを示す「あっ」や否定を示す「ちがう」や「いや」およびそのバリエーションがよく観察される。
 
⒋2 他者開始修復
206 他者による修復開始は大抵の場合、問題源のすぐ次の順番で行われる。次の順番で行われる他者開始修復に使用される技法は何が問題であるのかによって違ってくる。ここでは問題源を特定する力の弱い技法から強い技法の順に紹介する。
206 問題源を特定する力が一番弱いものには「え?」、「は?」「なに?」など「無限定の質問」(open-class repair initiator)(Drew, 1977) と呼ばれるものが挙げられる。これらの修復開始技法が修復開始に用いられた場合には、問題源を含む順番の発話をした話者は自分の発話が全く聞き取れなかったと判断することが多く、よってこの技法によって開始された修復は、問題源を含む順番の発話をそのまま繰り返すことによって完了することが多い。
 
211このように、繰り返しによって開始された修復は、問題源の発話を繰り返すことによって完了する場合と、問題源の発話を説明することによって完了する場合があることがわかる。どちらによって修復を完了させるかは、その時の文脈や状況によって、問題源を含む発話をした話者自身が選択することになる。
 
213 以上のように、他者による修復開始が複数回起こる際に使われる修復開始の技法は無秩序に並べられるのではなく問題源の特定能力が弱いものから強いものへという順で起こる、という秩序があることを観察することができる。
 
5 自己修復の優先性
216 このことからも自己による問題源の修復の方が他者による修復よりもより速い問題解決法であるのがわかる。言い換えれば自己による修復開始および修復完了の機会は、常に他者による修復開始および修復完了に先立ってあるということで、ここから自己開始、自己修復の優先性ということが観察される。
 
6 日本語特有の修復
6.1「ていうか」の使用
6.2 指示代名詞の使用
6.3 格助詞を含んだ修復
 
 
平本さんと細田さんの修復の章を読んでみて、下記の点が違うと感じた。
①それぞれにユニークな節があった。平本さんの修復では、第5節で「修復と行為」という節を設けられていた。細田さんのほうでは、「日本語特有の修復」という節があった。このため、平本さんの修復の章は社会学よりで、細田さんの修復の章は言語学よりに感じた。
②章末が違っていた。『会話分析入門』では、読書案内があり、他の関連する文献が載っていた。『会話分析の基礎』では、課題があり、基本問題や応用問題があった。 
 

 

会話分析の基礎

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会話分析入門

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