【読書メモ】細田由利 第9章教室内相互行為ー制度的場面の分析『会話分析の基礎』

313 そのような制度的場面においても、言葉のやりとりはその制度的場面における相互行為の目的(例えば法廷において証言をする、診療を受ける、著名人にインタビューするなど)を果たすために非常に重要な役割を持つ。よって、その制度的場面において参加者がいかにして様々な目的を達成するのかを検証するのには会話分析の手法を用いた分析が実に有益である。この章ではまず、制度的場面は会話分析研究においていかにして分析されるのか、その留意点を述べる。その後、制度的場面の一例である教室における相互行為を採り上げ、教室内相互行為の会話分析的研究の展開について解説していく。
 
1.制度的場面の相互行為
314 会話参加者がある特定の社会的コンテクストが相互行為に関連性があるものとしてふるまう時に、はじめてそのコンテクストがその相互行為に大きな影響を与えると捉えられるのである(Schegloff, 1991)。
 
314 相互行為参加者のアイデンティティや属性(医者、患者、先生、生徒等)を考察する際には、分析者はそのアイデンティティや属性をもともと存在するものとして様々な行為の説明に利用するのでなく、参加者自身が会話の中のその瞬時に自分、会話相手、または話の中で言及している人のアイデンティティや属性にどのように志向しているのか(またはいないのか)を詳細な観察を通して検証するのだ。
 
316 これらの制度的場面の特徴を相互行為内で実現することにより、参加者は、(1)その相互行為の目的とその目的に結びついたアイデンティティ、(2)その制度的場面で会話参加者が「できること」「していいこと」の制約、および(3)その会話が行われている制度的場面特有の手続きや解釈の枠組みに対する志向を公にするのである(Drew and Heritage, 1992; Heritage and Clayman, 2010)。こういった参加者の志向を精査することによりそれぞれの制度的場面の特徴がみえてくるのである。
 
316 以下では制度的場面の1つである教室場面を取り上げる会話分析研究の教室における相互行為分析への応用の可能性について検討していく。そのために教室というコンテクストをどのように捉えるべきか、教室における相互行為に特有のプラクティスはいかなるところで観察可能なのか、会話分析は教室における学習を記述することに適しているのか、などを考察する。
 
2.教室における相互行為
2.1 教室における相互行為の会話分析
317 よって会話分析を教育相互行為の分析に用いる最も重要な利点の1つは、会話分析の手法を用いることによって私たち観察者は2人以上の参加者の間で起こる学習の過程を観察することができることである(Markee and Kasper,2004)。例えば、教室での質問と応答の連鎖において学習者の応答はその学習者のその質問に対する理解を公に示しているし、教師の第3順番の発話はその教師がその学習者の応答をどのように理解・解釈したかを示していると考えられる。
 
330 現在までの研究で学習者の第2順番(応答)のあとに起こる教師による第3順番は単なるフィードバックや評価を与える以上の役目をしていることがわかった。Lee(2007)は教師の第3順番がどのような行為をするかは学習者が第2順番でどのような発話をするかによるもので、第3順番はその直前のやりとに再度働きかけて方向付けするものであると論じている。そしてLeeは第3順番が成し遂げる様々な教授的行為(学習者が返答するのに苦労している質問を噛み砕くこと、教育目標に向けての方向付け、学習者が望ましい返答をできるようにするためのヒントの提供、教室マネージメント等)を挙げている。

 

会話分析の基礎

会話分析の基礎