日常文庫@紅花読書会

日常に関すること。山形市で紅花読書会を開催しています。

第2回 紅花読書会(地方会社員の読書会改め)課題本『52ヘルツのクジラたち』

2021年本屋大賞受賞、映画化と今話題の本書。 52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。 本書では…

来月で最終回 ハン・ガン『菜食主義者』読書会 これまでの感想

ハン・ガンの『菜食主義者』は、「菜食主義者」、「蒙古斑」、「木の花火」の3つの短編からなる小説です。 2月11日に「菜食主義者」、3月17日に「蒙古斑」を対象にしたオンライン読書会を行いました。 来月が最終回になります。 第1ー3回 2024年4月28日 日曜…

【開催】地方会社員の読書会-ハン・ガンの『菜食主義者』を読む

《読書会の趣旨目的》 地方会社員が、趣味の読書を通して、人とのつながりを広げ、新たな情報や経験を得たいと思い企画した、課題本型の読書会です。 課題本型の読書会にした理由は、同じ本を読んだとしても、人によって解釈がさまざまで、そのようなさまざ…

読書メモ:イェスパー・ユール著 松永伸司訳(2005→2016)『ハーフリアル—虚実のあいだのビデオゲーム』

ハーフリアル ―虚実のあいだのビデオゲーム 作者:イェスパー・ユール 発売日: 2016/09/30 メディア: 単行本 Chapter1 序論 P23 この本の主な主張は、ビデオゲームはルールかつフィクションであるというものだ。これは、ゲームはルールかフィクションのどち…

【読書メモ】細田由利 第9章教室内相互行為ー制度的場面の分析『会話分析の基礎』

313 そのような制度的場面においても、言葉のやりとりはその制度的場面における相互行為の目的(例えば法廷において証言をする、診療を受ける、著名人にインタビューするなど)を果たすために非常に重要な役割を持つ。よって、その制度的場面において参加者…

【読書メモ】細田由利 第5章 修復の組織 『会話分析の基礎』

183 これまでみてきた連鎖の組織が機能するには参加者同士がお互いの行為を理解することが前提となっている。従って参加者間の間主観性を維持しながら相互行為を先に進めるためには、聞き取りや理解の上で問題が生じた場合、それに対処する必要がある。その…

【読書メモ】第8章「修復」平本毅(2017)『会話分析入門』

第1節 はじめに 191 相互行為を成り立たせるための前提となる発話の産出、発話の聞き取り、発話の理解にかかわるトラブルに対処する方法を「修復(repair)」と呼ぶ(Schegloff, Jefferson & Sacks 1977)。 この章では、修復が相互行為においてどのように…

【読書メモ】山崎敬一・西阪仰編『語る身体・見る身体』

第一章 語る身体・見る身体 西阪仰 PP.3−29 1 順番どりシステムサックスの一つの驚き↓「一時に一人が、そして一人だけが」しゃべっている↓会話における発言順番の交替が一定のしかたでなされているから↓ルールのセットがある(1)会話の順番交替のルール ↓…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #13

Sacks argues that members can identify "possible descriptions" solely on the basis of formal features such as those he describes. 訳:サックスは、次のように主張している。成員は、彼(サックス)が説明したような秩序だった特性から成る基盤に支…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #12

Notice two points of perspective shared with linguistics and ethnoscience. There is, first, the view that analysis of human sciences need not wait for results from other sciences and that communicative sequences can be analyzed as entities…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #11

Members are seen as using social knowledge in three ways: (a) to recognize particular strings of sentences as possible or potentially valid instances of descriptions, stories, conversations, etc.; (b) to achieve certain social effects: to …

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #10

His aim is to show how listeners must utilize their own knowledge of the social system to interpret the juxtaposition of these terms in conversation. 訳:彼の目的は、次のことを明らかにすることである。どのように聞き手たちが、会話のなかで、…

「女子力」を教示する技法ー気持ちを切り替えるための「美しくなる努力」 分析・まとめ

3.「女子力」を教示する技法 3-1.データ 下記が、近藤が例として引用していた記事の一文の前後の文章である。これは、「今、必要な『女子力』はコレだ!」という記事の抜粋である。 この記事では、「今、必要な『女子力』(気配り力、切り替え力、盛り上げ…

「女子力」を教示する技法ー気持ちを切り替えるための「美しくなる努力」 方法論

2.「女子力」をいかに問うべきか 2-1.分析対象 「女子力」と「美しくなる努力」の理解可能性を問うためには、いかなる対象を分析したらいいのか。私は、テクストで使用されている「女子力」について分析をおこなうことが、適切であると考える。 なぜなら、…

「女子力」を教示する技法ー気持ちを切り替えるための「美しくなる努力」 はじめに・先行研究

長年、「〇〇力」について関心があり、卒論では、ポスト近代型能力について書いた。今回は、卒論では、取り上げなかった「女子力」について考察した。おそらく「〇〇力」について調べるのは今回で最後だと思う。 0.はじめに 「女子力」という言葉が、2009年…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #9

He studies the semantic and theoretical strategies by which speakers identify themselves or react to others, his analysis concentrates on the use of particular nouns or verbs such as 'mother,' 'baby,' 'shortstop,' 'baseball team,' 'hairsty…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #8

But unlike the linguists, who in their concern with literary style tend to be concerned with texts per se, Sacks focuses specifically on verbal exchanges between speakers. 訳:しかし、言語学者とは異なっている。文体論について関心がある言語…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #7

Sacks deals with material on which linguists have also worked-the coherence of texts [how it is that sentences are heard as a connected text and not as an arbitrary list (Hassan 1968)] and the delimitation of semantic fields. 訳:サックス…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #6

There must, therefore, be implicit kinds of knowledge in terms of which this ability can be explained. 訳:そのため、この能力が説明可能となる点から、それとなく示されるタイプの知識があるに違いない。 implicitは、どう訳すべきなのだろうか。 辞…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #5

The initial observation is quite like that of grammar: We understand sentences rapidly and unreflectingly in terms of relationships that are not overtly expressed. 訳:初期の観察は、(次のような)完全に基本原理のようなものであった。私たち…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #4

In the present chapter, which contains material to be incorporated in more detailed form in his book (Sacks in press), he develops a conceptual apparatus for the empirical study of the specific ways in which what Garfinkel calls practical …

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #3

His research has been concerned with natural conversation, analyzed to discover how its structure and resources reflect speakers' social knowledge. 訳:彼の研究は、自然な会話がテーマとされ、その組織や諸資源が、話し手の社会的知識をどのよう…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #2

He received his doctorate from the University of California, Berkeley, and has taught at the University of California, Los Angeles. 訳:彼は、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で教師をしている…

HARVEY SACKS (1972) On the Analyzability of Stories by Children #1

数年かけて、サックスの「子どものお話の分析可能性」を一文一文訳していきたいと思う。飽きずに最後までちゃんと訳させるかが心配だ。サックスの英語は難しいと評判なので、そこも不安である。 Harvey Sacks is an associate professor of sociology at the…

フランシス&ヘスター 『エスノメソドロジーへの招待』 1章社会的相互行為、言語、社会

読書ノートのまとめとして、ブログを利用してみようと思う。 社会的相互行為 あらゆる社会的相互行為には、構造化されたものとしての性格をもつということ、意味は文脈によって理解可能になるということという二つの共通の特徴がある。6 構造化とは? ここ…

タルコット・パーソンズ『社会的行為の構造1 総論』「第3章 行為理論における個人主義的実証主義の歴史的発展の諸段階」その1

ホッブス問題を勉強するために『社会的行為の構造1 総論』の第3章を読んでみた。ここでは、パーソンズの紹介で簡単にすっ飛ばされるホッブス問題におけるパーソンズの議論を丁寧に追ってみたい。 結論をさきにいえば、第3章でパーソンズは、当時主流だった…

『SWEET SIXTEEN』 「孤独」のデザイン

ケン・ローチ監督『SWEET SIXTEEN』を観た。 舞台はイギリスのスコットランド。もうすぐ16歳になる15歳のリアムが、服役中の母親が釈放されるまでに、家族で暮らす家を購入しようとヤクザのヤクを売るというお話。 この映画で素晴らしかったのは、リアムとい…

西阪仰「差別の語法-『問題』の相互行為的達成」『差別の社会学』

この論文では、いかに社会学が「(社会)問題」を問うべきか、その態度が示されている。 社会学は、差別や権力、精神病などの「(社会)問題」を賑やかに語ってきた。しかし社会学は、「(社会)問題」そのものの分析をあまりしてこなかったと西阪は述べる。…

『極私的ドキュメント にっぽんリアル「逃げずに生きたい」』 「忘れた」ケンカのやりとり

EM TV

『極私的ドキュメント にっぽんリアル「逃げずに生きたい」』を観た。いつも問題から逃げていると思っている30歳のディレクターが、その逃げ癖がついた原因の小学校6年生のときのトラウマを振り返るという話。トラウマは、みんながいる教室での親友とのケン…

映画『バベル』 「聾者」と「女」

バベル スタンダードエディション [DVD] 出版社/メーカー: ギャガ・コミュニケーションズ 発売日: 2007/11/02 メディア: DVD 購入: 1人 クリック: 92回 この商品を含むブログ (267件) を見る 『バベル』を観た。 菊池凛子が演じる聾唖の女子高生の映画だった…